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エターナルドリーム


【登場人物】

 

☆ラシエル:男性のような女性のような。死神のようだけれど死神じゃない。魂の選定者。淡々とした雰囲気を持っていて自分の仕事に

       対して疑問を抱いている。

☆父親兼オーナー:父親=母親のことをとっても大好き。オーナー=正体不明。冷酷で魂を集めている。

☆エスタリア:ロリババア。1万年は生きているらしい。オーナーの言うことは絶対で逆らうものには容赦ないが、ふとした優しさを見せることも。

☆母親:普通の母親。本名、川谷千弥子。動物好きで娘のことを大切に思っている。自分や周りのことをよく理解している。

☆娘:一人っ子。ごく普通のどこにでもいるような女の子。10歳くらいを想定。無邪気でお母さん大好きっこ。


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【役表】

ラシエル:不問:

父親兼オーナー:♂:

エスタリア:♀:

母親:♀:

娘:♀:


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エスタリア:お、ラシエル、次の仕事でも舞い込んできたのかの?

ラシエル:おそらく。

エスタリア:しかしオーナーも回りくどいことをするのう。直接伝えればよいのに。
      架空会社、エターナルドリームからのダイレクトメールとは、かくも面倒くさい。

ラシエル:そのほうが都合がいいこともあるのだろう。

【封筒を開き、紙切れが入っているのを見る】

オーナー:10月11日、川谷千弥子(かわたに ちやこ)。

ラシエル:...。

【ソファから立ち上がり、外に出る】

エスタリア:これ、待たぬか。妾を置いて行くなーーー!


【街中のペットショップ】


娘:お母さん、このワンちゃん可愛いと思わない?飼ってもいいかな?

母親:ダメよ。お父さんが犬が苦手なの、知っているでしょう?

娘:えー、こんなに可愛いのにー。

母親:ふふ、動物好きって私に似ちゃったのね。

娘:わ、私お母さんに似てるの?

母親:きっと私にもお父さんにも似てるわよ。

娘:えー、お母さんに似てるだけでいいよー。

母親:お父さんが聞いたら悲しんじゃうわよー?


ラシエル:わからないな。どうして今回はこの母親がターゲットになっているんだ。

エスタリア:それは妾にもわからぬ。オーナーの決めることじゃ。

ラシエル:幸せそうな親子を、私が斬り捨てる。そのようなこと...。

エスタリア:お主、オーナーの言うことに背くことはできぬと何度言うたらわかるのじゃ。

ラシエル:わかっている。私の役割は、魂を裁くこと。良き魂は浄化し、悪しき魂は抹消する。選定者だとわかってはいるんだ。

エスタリア:じゃからこうして魂を見にきておるのじゃろう?

ラシエル:ああ、そうだな。


娘:それはお父さんが可哀想。

母親:でしょう?

父親:やっぱりここにいたんだな。本当に二人とも動物が好きだなぁ。

娘:大丈夫、ちゃんとお父さんのことも好きだよー。

母親:まあ。

父親:うん?何だかよくわからんが、そうかそうか。はっはっは。

母親:もう、お父さんったら。うふふ。

    さあ、帰りましょう。今日は皆が大好きなハンバーグを作ってあげるから。

娘:やったー、よかったね、お父さん!

父親:ああ、そうだな。楽しみにして帰ろう。


エスタリア:ラシエル、お主はオーナーの飼い子。逆らうことなどあってはならぬのじゃ。

 


【場面転換。夜、日付は10月11日】

エスタリア:ラシエル、どうした。行くのじゃろう?

ラシエル:...。

エスタリア:何を迷う必要がある。お主ならわかっておるはずじゃ。あの母親はもう...。

【ラシエル、静かに壁をすり抜け、一家のいる家に侵入する】

母親:ひっ、何なの?!

父親:どうした、...って君は何だね!

ラシエル:私は魂の選定者。川谷千弥子、お前の魂を狩りに来た。

母親:何を言っているの!?

父親:お前は下がっていなさい。

娘:どうしたの、お父さんお母さん?

母親:出てきちゃダメ!

娘:大きな鎌...。まさか、しに...がみ...さん?

父親:君にどうこうされるわけにはいかないんだ。出ていってくれ!

エスタリア:威勢はいいが、震えておるぞ?

ラシエル:エスタリア、余計なことはいい。
     川谷千弥子、狩られることに心当たりはあるか。

母親:いっ、いいえ、いいえ、そんなものありません!
   きっと人違いです、出ていってください!

父親:出ていってくれないのならば、こうだ!

【ゴルフクラブを振り回す父親。だが、ラシエルをすり抜け、当たることがない。空振りする音だけが響く】

エスタリア:無駄なことをするのう。

娘:お父さん!!...死神さん、お母さんをどうするの!!

母親:出てきちゃダメって!

娘:お母さんを、お母さんを助けて!!

ラシエル:今一度問おう。狩られる覚えはないか。

父親:わかるわけないだろう、どうして千弥子が...。

母親:...。

娘:お母さん、お母さん...。

母親:皆は欺けても、死神は欺けないのね...。

父親:千弥子?

娘:どう、したの?お母さん。

母親:ごめんね、だましていて。

父親:どういうことだ?

母親:私はね、ガンに侵されているの。乳がんステージⅣ。肝臓に転移しているわ。

ラシエル:寿命、か。

娘:え?お母さん?

父親:そんな、お前元気そうじゃないか。痛そうなそぶりさえみせないじゃないか。

母親:女は痛みには強いものよ。それに、飲んでいたお薬は、麻薬だもの。痛みを抑えて、できるだけ皆で過ごせるように、先生に頼んだの。

父親:それにしても、どうして相談もなしに...。

母親:あなたは嘘が下手だもの。すぐに皆にばれちゃうわ。

父親:...。

母親:ごめんなさいね、でも、私は家族の時間が何よりもかけがえのないものだったのよ。

娘:お母さん...。

母親:リオ、私はあなたの母親よ。あなたのことをずっとずっと見守っていたかった。でも、死神さんがお迎えに来ちゃった。

娘:......死神さん、お母さんを、お母さんを助けて!連れていかないで!!

ラシエル:...。

エスタリア:無理じゃ。オーナーの手から逃れることなどできぬ。

ラシエル:...運命からは逃れることはできない。

母親:そう。なら、狙いは私だけ。遺言くらいは許してくれるわよね?

ラシエル:ああ...。

母親:ありがとう。...あなた、リオをお願いね。愛しているわ。これからもずっと。

父親:千弥子...。

母親:リオ。辛いこともあっただろうけど、私は、あなたのことをずっと愛していたのよ。これは本当。そしてこれからも変わらないわ。

娘:お母さん、お母さん、私もお母さんのことが大好き。だから置いて行かないで。

母親:ごめんね。リオが立派なお嫁さんになるところ、見たかったな。あなたとも、ずっと一緒にいて、リオが巣立った後もゆっくりとした

   時間を過ごして、お婆ちゃんになって...。

ラシエル:日付が変わる。時間だ。

母親:ええ、わかったわ。あなた、リオをあっちの部屋に。

父親:...リオ。

娘:嫌だ、お母さん、お母さんーーーーー!!

母親:リオ!

エスタリア:仕方がないのう。


【エスタリアの不思議な力で父親、娘ともに眠りに入る】


エスタリア:妾のせめてもの優しさじゃ。

母親:ありがとう。さあ、この残り少ない命をもらっていくといいわ。

ラシエル:わかった。


【ラシエルが鎌を引き斬ると、母親はばったりと倒れる】


ラシエル:任務完了。

エスタリア:じゃな。

ラシエル:...。

エスタリア:ラシエル、どうした、浮かぬ顔をしておる。

ラシエル:...何でもない。

 

【数日後】

 

 


エスタリア:ラシエル、エターナルドリームから、任務状が届いておるぞ。

~to be continued~

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